眠れない物語のペイジ

私立恵比寿中学の諸々を徒然なるままにつづるブログ

「だから私は推しました」

 

ネタバレありなので1話未視聴の方は是非ご覧になってからお読みください。

 


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「だから私は推しました」

 

というドラマの1話を見ました。NHKが少し挑戦的なテーマを扱う「よるドラ」の枠で先週から始まったものです。

 

この作品のテーマはズバリ「女オタ」です。ひょんなことから地下アイドル「サニーサイドアップ」にハマってしまった普通のアラサー女子の物語。

 

オタクを描く作品って、例えば「電車男」とか「トクサツガガガ」とか昔からちょくちょくあったと思うんですけど、そういう作品は比較的明るくポップに描かれていたり、オタクの気持ち悪さがわかりやすく描かれていたり、「オタク」というアイコンを強調したものが多かった気がするんです。でも、この作品はなんというか、とてもリアルで、怖い。

 

まずね、主人公が普通のアラサー女子なんです。非モテ人生を歩んできた冴えない男とか、娘に投影してしまうおじさんとか、そういう「ハマりそう」な人達ではなく、普通に友達もいて、普通に彼氏もいて、普通に人間関係だって上手くいってる、ちょっと承認欲求の強い人。そんな人の人生が暗がりに傾いてしまったタイミングで「自分に投影される存在」として一目でダメと分かってしまう地下アイドルの女の子に出会ってしまう場面は、(ドラマなので多少は鮮烈に描かれてはいますが)「沼」の構造を端的に表していると思います。判官贔屓というか「応援したくなる」という心理、ダメな子って一定の需要があるんだよなという理由がすっと入ってくる感じ、巧いです。

 

「デュフフwww!大好きwww!君しか見えないよwww!!」とかではなく、冷静に普通に「あの子は私だ」と考えてしまうオタクの方が案外怖いのかもしれないなと思わされます。(もちろん前者のオタクも大概やばい)

 

そういう、承認欲求の強い人が自分を鏡に写したような存在としてアイドルに没入してしまう、「いいねが欲しい」から「いいねをあげたい」に転換する心理にはなんだかとても納得させられましたし、オタクってやっぱりそういう人が多い気がしますね。これは私見ですけど。

 

それに、オタクの接触シーンだってね、いかにもキモそうなおじさんを配して「大好きだよ!」って言わせておけば「そういうシーン」としては十分成立すると思うんですよ。でも描かれているオタクのキモさってね、「運営に小言を言う」とか「アイドルを下の名前で馴れ馴れしく呼ぶ」とか「目を合わせない」とかそういう、些細な、でも確実なキモさ。「結婚しよ!」と息巻くオタクが多少自分に自信のありそうなイケメンだったり、それに対する「どうしよっかなー」っていうあしらいたいけど無下にはできない気持ちを感じさせる地下アイドルの返しだったり、いちいちリアルで、凄くしっかりしているなと感じました。厄介にも優しく対応する達観したおじさんオタクが村杉蝉之介さんなのも納得だし、箱推しなのも納得だし、チェキ券を無料であげる感じとかももう怖いくらいにリアルで丁寧。

 

このドラマ、プロデューサーが三鬼さんだったり(NHKももクロ関係は大体この人)、考証に姫乃たまさん入ってたり、何と言っても脚本が天下の森下佳子さんだったりということもあって、めちゃくちゃ「本気」で作ってるなというのがありありと分かって、1話からとても楽しめました。

 

最後にはハっとさせるドラマ的な展開もありましたし、今後も凄く楽しみです!!