『小林歌穂がエビ中を辞める日』
6月12日、ここはスターダストプロモーションのとある会議室。エビ中メンバーは、エビ中の動画とかの新企画『エビ中オーディション』を撮ることになっており、その打ち合わせを終えて談笑中。昼下がり。1人足りない。
星名「ねぇ、どんなかな?」
真山「ん?何が?」
星名「オーディションってさ」
真山「あーね」
安本「あれじゃない?即興演技とかじゃない?なんだっけほら、リモート!みたいなやつ」
柏木「エチュード?」
安本「それ!」
柏木「昨日のLINEの連絡には『メンバーを絞ります』としか書いてないね」
星名「誰か卒業させられたりして 笑」
真山「縁起でもないこと言うな」
小林「ねぇ、莉子ちゃん大丈夫かな…」
安本「あぁ」
星名「中山仮病説」
真山「いやそれはないわ」
星名「でもさっきまで元気だったじゃん。ホントは眠いだけとかなんじゃないの?」
柏木「まぁ、あんまり体調崩すイメージないもんね」
小林「んー…心配だな…」
校長入室
真山「あっ藤井さん」
柏木「どうでした?」
校長「んー様子は見てるけど、まだなんとも言えないかな。ちょっととりあえず30分くらい休憩で」
星名「えっヤバそうなんですか?莉子」
校長「いやわかんないね。なんとも。とりあえず俺が見とくから、まぁ各自好きに。あー小林」
小林「はい?」
校長「買い物…行ける?」
小林「えっ…買い物ですか?」
校長「良かったらさ、なんか中山がテンション上がりそうなもの買ってきてくんないかな。ほら、俺わかんないからさ、そういうの」
小林「私…ですか?」
校長「ほら、仲良いだろ?」
小林「えー…でも…私わかんないから…そういうの真山とか」
真山「莉子ちゃんのこと一番分かってるのは歌穂ちゃんだよ。莉子ちゃんのため。ね?」
小林「でも…」
校長「じゃあ隅内、ちょっと付いてあげて」
隅内「はい」
校長「あとなんか滋養強壮に良さそうな食べもんとか飲みもんとかさ、なんか適当に頼んだわ」
隅内「わかりました」
小林「うーん…」
校長退出
星名「結構…ヤバめかもね。莉子」
小林「テンション上がるもの…えっと…」
安本「なんか言ってなかったの?ほら、例えばLINEとかで」
小林「あっ!」
真山「ん?」
小林「クラッカーだ!」
安本「ん?四角いやつ?」
星名「パーン!ってなる方じゃない?」
小林「なんかね?昨日LINEでね?欲しいクラッカーがあるって言ってたの!何回も。なんかね、8本入りの…えっと…これ!これの絵柄が可愛いから貰えたらテンション上がるかもって」
真山「なにそれ?クラッカーのジャケ買い?」
安本「使わないじゃん」
小林「ね!私も変だなとは思ったんだけどさ」
柏木「で、でも!それを買ってきたら莉子ちゃんのテンションは上がるんだよね?」
小林「んーわかんないけど」
柏木「歌穂ちゃんがそう思うなら買ってきた方がいいよ!うん!」
小林「そう…かな…?」
真山「うん!絶対そう!!!」
星名「なんか調べたら、そこのハンズに売ってるって!!!」
小林「なんかめっちゃ協力的じゃない?」
隅内「じゃあ歌穂、それ買いに行こうか!」
小林「えっ?う、うん」
「プルルルルル」
安本のスマホが鳴る。
小林「誰から?」
一同「いってらっしゃーい!!!!」
小林「ちょ、ちょっと!なんか展開早くない!?」
隅内、小林、退出。勢いよく戸がしまる音。
真山「ふぅ…強引…」
星名「何の電話?」
安本「わかんないけど切った」
柏木「ちょっとヤス!誘導の仕方が下手くそなんだって!」
安本「でも気づかなかったら意味ないじゃん」
柏木「まぁいいや!早く準備しよ!準備!」
20分後。スターダストプロモーション廊下。買い物から帰って来た隅内と小林。
小林「ねぇお酒買う必要あった?アルコールって体に良いんだっけ?消毒的なこと?」
隅内「うん」
小林「でも7本はいらなくない?」
隅内「一応だよ一応」
小林「オレンジジュースに、チキンに、お菓子に…もっとなんかお薬とかで良かったんじゃない?ちゃんとさ…」
隅内「病は気からって言うでしょ?まずはこれで莉子のテンションあげないと」
小林「莉子ちゃん元気になるかなぁ」
二人が会議室に近づこうとした時、中から声が聞こえてくる。
中山「…らないよ!」
小林「あっ莉子ちゃん」
真山「いらないかなぁ、小林」
星名「小林はいらないね」
小林「え?」
中山「いらないよ!だってバランス悪いじゃん」
安本「あー確かに」
柏木「全体のこと考えると、確かに邪魔かもね。高いし。エビ中、小林、うん。確かにいらないわ」
真山「藤井さんもそう思う?」
藤井「うん。いらない」
隅内「歌穂!一回!こっち行こう!」
小林「えっ!ちょっと!」
遠くの会議室へ小林を連れていく隅内
隅内「歌穂はちょっとここで待ってて?」
小林「えっ、でもなんか」
隅内「これは!私が持っていくから。待っててね。動かないで!」
買ったものを全て取り上げる隅内
小林 (小林はいらないって言ってた?全体のバランス?高い?っていうか莉子ちゃんいたし…えっどういうこと…?………あっ。え…?美怜ちゃん確か…誰か卒業させられるって言ってた…?エビ中オーディション…小林……エビ中に…いらない…………私、辞めさせられる…?)
会議室
柏木「うっちーお帰り!」
隅内「ねぇまだ終わってないじゃん!危なかったんだけど」
星名「待って!もうすぐだから」
真山「主役は?」
隅内「向こうでとりあえず待たせてる」
安本「えー、めっちゃ怪しまれるよそれ」
隅内「もう結構怪しんでたよ」
星名「準備終わった!!!!」
柏木「よし!じゃあ呼びに行こう」
真山「誰行く?」
藤井「一番面白いのは莉子だろ」
中山「えっ私ですか?」
隠れて様子を伺いにきた小林。また中の会話を聞いてしまう。
中山「私言いたくない!自信ないし」
柏木「でも誰かが言わなくちゃいけないんだから。どうせいつかはバレるんだし」
星名「そう!これは歌穂の、エビ中皆のためだから」
中山「そうやっておしつけたいだけでしょ!」
小林(……やっぱりそうなんだ!あぁどうしよう聞いちゃった………。莉子ちゃん…やっぱり言いづらいよね……)
中山「…わかったよ。私が言いに行くから、ちゃんと準備して待っててね!」
小林(…ヤバい!)
急いで近くに隠れる小林
小林(確かに考えれば変だもん…。企画の説明されなかったことないし、莉子ちゃんやっぱり元気だったし、私が代表で買い物行くわけない…。皆知ってて、それで、それで変な買い物に行かせてる間にこっそり私をクビにする会議してたんだ…。あーそうか…。何がダメだったのかな…。身長?高くて邪魔だって言ってたな…。かわいくないのかな…うーん…あぁ…だめだ…………なんか、…悔しいや…)
中山「あれーどこだ?歌穂ちゃーん!歌穂ちゃーん!!」
小林「……り、莉子ちゃん」
中山「あれ?泣いて…るの?」
小林「ごめんね…こんなことさせちゃって…」
中山「ちょっとこっちきて!!」
小林「わっ!」
会議室の前まで連れていかれる小林
中山「目をつぶって!いいよって言ったら開けてね!」
中山、勢いよく中に入る。
小林 (いいよって言われたら………もう皆と会えないのかな…。終わるのってなんだかあっという間だなぁ……。私、良いアイドルでいられたかなぁ…。クビになったら何しよう…。絵描きさん…保母さん………………やだな……やだ!やだ!やだ!やだ!!まだエビ中でいたい!メンバーもスタッフもみんな好きだもん!!やっぱりダメだ!わがままでもいいから言おう!!私、言う!!)
一同「いいよ~!!」
小林、勢いよく扉を開き、思いっきり頭を下げる
小林「私……!!!!まだエビ中でいたいです…!!辞めたくないです!!身長とかもう全然気にしなくなるくらい歌もダンスもうまくなるから!!!だから!!だから!!!」
「パパン!!パン!!!」
盛大にクラッカーが鳴る
小林「え?なに?……ハッピーバースデイ エビ中 ぽー?」
柏木「おっ、お誕生日!!!」
一同「おめでとう~!!!!!!」
小林「えっえっ!えーーーーーーー!!!」
10分ほどたった。お菓子、ジュース、お酒が広げられた会議室。華やかな飾りとBGMが包む。
一同「あははははは!!!!」
藤井「なんだよそれ!!」
小林「だ、だから!私辞めさせられるんだと思って!」
藤井「そんなわけないじゃん」
真山「美怜が余計なこと言うからだね」
星名「いや冗談だから、冗談。ポテチとって」
小林「でもなんか、小林いらないって…」
柏木「ん?あーそれは、あれだよ」
小林「ホワイトボード??」
柏木「いや、字がね?最初『エビ中小林ぽー』って書いてたんだけど、全体のバランス悪いから『エビ中ぽー』にしてバランスを直したの」
小林「そういうことか」
安本「でもどう?私のシナリオ!題して、小林歌穂誕生日ドッキリ大作戦!!!」
柏木「意味わかんないから」
安本「なんでよ!」
柏木「だって!あなたがケーキの予約時間間違えるから莉子が体調不良ってことにしたし!っていうか歌穂にクラッカー買わせる必要あった?バレちゃうじゃん!」
藤井「普通にこっちで準備すれば良いもんな」
安本「そっちの方がヒリヒリするじゃん?」
中山「ねぇ私に変なLINE送らせた!」
安本「文句あるなら皆で考えれば良かったでしょ!!」
真山「それはめんどいのよ」
星名「っていうかさ、途中で電話かけてきたのって莉子?」
中山「えっ?うん」
安本「そう!あれまじびびったかんね?」
中山「ケーキ屋さんの場所わかんなかったんだもん」
藤井「皆しっかりやれよ 笑」
柏木「まぁ何はともあれ!皆さんお酒を持ちまして」
星名「莉子はジュースね」
中山「カルピス!!!」
柏木「いきますよ!かんぱーーーい!!」
一同「かんぱーーい!!!!」
めいめいにお酒、ジュースを飲む。お酒が苦いと暴れる小林、笑う一同。幸せな時間が空間に溢れる。
小林「あっそうだ、じゃあ『エビ中オーディション』の話も嘘なんですか?」
藤井「ん?あぁそれはホント。やるよこれ終わったら」
星名「えー何やるんですか?」
安本「リモート!」
柏木「エチュードね」
藤井「…フルマラソン」
一同「え?」
藤井「フルマラソン走るから。メンバーを、絞ります。」
一同「ふ、ふっざけんなーー!!!!!!」
完